売買契約の後に売主様がするべきことは?
言うまでもないことですが、不動産の売買は売買契約を結んで終わり、というわけではありません。無事に売買契約を結んだあと、売主様にはいくつかやらなければならないことがあります。そのなかでも特に重要なのは「引っ越し先を決める」ということでしょう。
売主様のなかには、物件が売れる前に次の引っ越し先を購入している「先買い」と呼ばれるパターンの方もいらっしゃいます。でも、ほとんどはその逆。物件が売れてから引っ越し先を決める「先売り」と呼ばれるパターンです。いずれにしろ、実際に物件を引き渡すには引っ越し作業はもちろん、さまざまな準備が必要になります。
抵当権の抹消登記が必要
売却をしようとしている住まいの住宅ローンがまだ残っている場合、売主様は「抵当権抹消登記の準備」を行う必要があります。「抵当権がついている」ということは、住宅ローンを借りるために金融機関がその土地や建物を担保に取っている状態だということ。そのため、住宅ローンが残っている住まいを売却するときはこの「抵当権」というものを外す、つまり「抹消」しなければ売ることができないからです。
この手続きは不動産会社ができることではないため、売主様ご自身で住宅ローンを借りている金融機関に連絡を取っていただく必要があります。金融機関に「自宅を売却することになった」と報告をし、抵当権抹消登記に必要な書類を作成してもらいましょう。
ただし、この書類を作成するには2週間から1カ月ほどの時間がかかってしまうため、物件の引き渡し日である「決済日」が決まり次第、その日程を金融機関に伝えて、すぐに手続きに向けて動いてもらわなければなりません。
なぜ決済日を伝えるのかというと、抵当権を抹消するため、ローンの残りを繰り上げ返済するための準備となります。決済日に住まいが売れたお金で残債を一括返済するわけです。ローンの残債も不動産会社が知ることはできません。売主様は前もって金融機関にご自身の住宅ローンがあとどれくらい残っているのか、正確な金額を聞いておいてください。
住宅ローンの抵当権を外すためのこうした準備は、売主様の「やらなければならないこと」なのです。特に決済日は、金融機関が住宅ローンの残債を計算するために必要となる重要な情報なので間違えることなくきちんと伝えるようにしましょう。
費用がかかる土地の境界確定
土地付きの一戸建てや相続した土地を売る際、売主様は土地の「境界確定」をしなければなりません。これはお隣の土地と売却する土地の境界線を明確にするための作業です。
普通は土地の境界には「境界標」と呼ばれる金属プレートやコンクリートで作られた目印が設置されています。ところが、この境界標が何らかの理由で無くなってしまっていたり、目視できないような状態になっていることが少なくありません。そのような場合、売主様は境界標を復元する必要があります。
境界標を設置する作業も不動産会社が行うものではないため、土地家屋調査士に依頼しなければなりません。費用は、境界標を1カ所復元するだけなら10万円未満で済むこともありますが、測量図が昭和40年代のものしかないような場合は全部図り直さないといけないので、数十万円かかってしまいます。
また、売却する土地が私道に面している場合はもっと複雑になります。そのような土地の境界標を復元するには、隣接している土地・道路の所有者の承諾と印鑑が必要となるため、あらかじめ日程を調節し、関係者立会いのもとで測量をする必要があるからです。こういったケースでは、土地の形状や道路付けにもよりますが、作業期間は1カ月以上、費用は4〜50万、場合によってはそれ以上かかることもありますので、決済日が決まり次第、早めに取りかかりましょう。
ここで「売買契約の際には、まだ境界が確定していないのか」という疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。たしかに、土地の境界が確定していないということは、売却する土地の面積が明確にわかっていないということ。実は、売買契約の時は、実際の面積ではなく「土地登記簿」の表示面積を用いる「公募売買」というやり方を用いるのです。このあたりのお話は次回、詳しく説明していきます。
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